この記事では、総合型選抜の試験内容をわかりやすく解説します。
「総合型選抜はどんな試験内容なの?」
「一般試験と比べて難しいのかな?」
総合型選抜とは、大学の求める人物像(アドミッション・ポリシー)にマッチする学生を、学力以外も考慮して選抜する方式です。2021年度の大学入試改革の際、大学の求める人物像を総合的な視点で丁寧に判断していくために、AO入試に代わる形で導入されました。
文部科学省が実施した調査では、85.6%とほとんどの大学が総合型選抜を導入しており、年々合格者も増えています。
そんな背景から、総合型選抜で受験しようと考えているものの、実際の試験内容があいまいな人は多いですよね。
そこで、この記事では総合型選抜の試験内容をわかりやすく解説します。試験で重視される項目や難易度も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
- 面接や小論文・学力試験などが主な総合型選抜の試験内容
- グループディスカッションや集団面接を行うところもある
- 試験では大学が求める人物像とのマッチ度合いが重視される
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総合型選抜の試験内容
さっそく、総合型選抜の試験内容を、9つにまとめて紹介します。
- 書類選考
- 面接
- 小論文
- 学力試験
- 実技試験
- 口頭試問
- プレゼンテーション
- グループディスカッション
- 集団面接
総合型選抜の試験内容は、書類選考と面接に加え、小論文や試験など各大学独自の試験を行うところが多いです。特に、書類と簡単な面接だけで合格することもあった旧AO入試から、学力も含めた様々な能力を多面的にはかるための試験が増えています。
その経緯は、2021年度に文部科学省が総合型選抜を導入する際に評価方法の改善点として挙げた以下の2点にあります。
- 各大学による独自の評価方法または大学入学共通テストを必須とすること
- 志願者本人の提出した志望理由書などを積極的に活用すること
この通知をもとに、総合型選抜の選考方法は学力も含めて多面的に能力を測れるようなものが採用されており、その試験内容は大学によって異なります。
では、それぞれの試験内容を詳しく解説していきます。
書類選考
大学によって指定された書類を提出し、その内容によって選考される試験です。ほとんどの大学で最初の選考として採用されています。一般選抜でも出願の際に書類提出は必要ですが、総合型選抜は書類の内容面で選考される点で異なっています。
大学が求める人物像にマッチしているかどうか、まずは書類をもとに受験者を判定していきます。
各大学によって提出書類は異なりますので、ここでは代表的な書類を何点か説明します。主に「これから何をしていきたいか」について記入する書類と「これまで何をしてきたか」を記載する書類の提出が求められる傾向にあります。
- 志望理由書:大学(学部・学科)の志望動機をまとめるものです。その後の面接などでも必ずと言っていいほど確認されるもので、総合型選抜において最も大事な書類と言っても過言ではありません。
- 学修計画書:大学卒業後の進路もふまえて、入学後の目標や学びたいことなどをまとめる書類です。1の志望理由書の中にまとめて記載することもあります。
- 調査書:出身高校または在学中の高校で発行される書類で、一般選抜でも必要です。学業成績、評定平均、生徒会などの特別な活動の記録、出欠状況などが記載されています。1出願につき1つ必要なことが多いので、多く発行しておくことをおすすめします。
- 活動報告書:主に高校などで受験生が行ってきた活動を記載する書類です。これまでに取り組んできた課外活動や部活動、研究活動、大会やコンクールの成績等を記入します。
面接
事前に提出している書類などをもとに、試験官と対話を通して選考を行う方式です。書類だけでは伝わらない実際の人物像やマナー、コミュニケーション能力などを主に見ています。
志望動機やこれまでの活動、自己PRなどを求められることが多いですが、こちらも各大学によって種類は多様ですので何個か例を紹介していきます。
- 個人面接:受験生1名と試験官で行われる形式です。1対1のことが多いですが、試験官が複数いることもあります。
- 集団面接:複数の受験生が同時に面接を受ける形式です。一般的には、受験生に対して順番に同じ質問を行っていくことが多いです。
- 口頭試問:口頭で学力や知識を問う形式を口頭試問と言います。筆記試験、学力試験を面接形式で行うものと思っていただくとイメージしやすいです。口頭でそのまま答えさせることが多いですが、ホワイトボードで解説を交えて行うような場合もあります。志望学部、学科に沿った専門的な知識や高校で学ぶ教科についての知識など大学、学部によって設問内容は異なります。
- プレゼンテーション:特定の項目やテーマに関してプレゼンテーションを行う形式です。時事や社会問題などをテーマに、論理的思考力や課題解決力などが問われます。口頭で話すだけで良いものや資料を使って説明が必要なこともあり、多くの場合は質疑応答も含んで実施されます。
- グループディスカッション:受験生同士でグループを組み、特定のテーマに関して議論を行います。議論の結果をホワイトボードなどにまとめて発表する、レポートとして提出するなどを通して受験生を選抜します。
プレゼンテーションとグループディスカッションは、特に各大学で出題内容が分かれる部分ですので一例を記載しました。ぜひご参考にしてください。
- 出題例
大学 | 令和6年度 日本大学経済学部 |
---|---|
テーマ | 経済学部が提示する研究課題について小論文の提出と、その小論文の内容をもとにプレゼンテーションを実施 |
時間 | 質疑応答も含めて20分程度 |
- グループディスカッションの出題例
大学 | 令和5年度 日本大学危機管理学部 |
---|---|
テーマ | 首都機能の移転について、候補地とその理由 |
時間 | 40分間のディスカッションと5分で発表 |
小論文
社会問題や特定のテーマに関して、自分の主張を論理的に述べる文章を小論文と言います。形式は、試験日当日に時間を測り行われる場合と事前提出が求められる場合に大きく二分され、字数制限があることが多いです。
ある意見に対して賛否の立場を明らかにしたうえで根拠を論理的に組み立てていく内容が一般的です。この場合は、意見の内容よりも論理の組み立てや語彙、客観性などが重視される傾向にあります。
一方、社会的課題に対する解決手段の提案を求めるような問題も多くなってきております。
その場合は、常日頃からの問題意識や主体性をもった思考力なども合わせて問われていると見て良いでしょう。
- 小論文の出題例
大学 | 令和6年度 日本大学理工学部物質応用化学科 |
---|---|
テーマ | AI(人工知能)と化学の関わりについて ①AIとは何か。また利点、問題点はなにか。 ②化学の研究にAIはどのように関わっていくと考えているか。 それぞれ200字程度にまとめる。 |
時間 | 30分 |
学力(試験)
総合型選抜は、多面的に学生を評価する試験ですが、同時に一定の学力が備わっていることも必須とされています。そのため、一般選抜同様に実際の学力試験を課している大学もあります。
学力試験に同等の能力があると評価するために、提出した調査書や大学入学共通テストの結果、外国語検定試験による資格などを使用する大学もあります。
総合型選抜の学力試験についてより詳しく知りたい人は、次の記事を参考にしてください。
実技試験
建築、美術系の学部などでは、試験日当日に実技試験が課される場合もあります。音楽、芸能、芸術などを扱う学部での実施が多いですが、それ以外の学部でも実際に大学で行われる講義を聞いてレポート提出を求めるような試験を実施していたりします。
- 実技試験の出題例
大学 | 令和6年度 日本大学理工学部建築学科 |
---|---|
テーマ | 街並みのスケッチ |
時間 | 60分 |
総合型選抜ではどんなことが重視されるのか
総合型選抜で重視されるのは以下の2点です。
- 大学が求める人物像とマッチしているか
- 学力の3要素が備わっているか
1.大学が求める人物像とマッチしているか
総合型選抜は、大学や学部が「求める人物像」をより明確にした選抜方式です。書類や面接、小論文など様々な選考を通して、受験生が「求める人物像」にマッチしているかどうかを見ています。
そのため、受験生は大学の「求める人物像」をまとめたアドミッション・ポリシーを深く理解し、自分の「学びたいこと」が合っていると伝えていく必要があります。
総合型選抜におけるアドミッションポリシーについてより詳しく知りたい人は、次の記事を参考にしてください。
2.学力の3要素が備わっているか
文部科学省は、大学入学者選抜に必要なものとして、学力の3要素(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度」)を重視しています。そしてそれは総合型選抜でも同様です。
たとえば、高校時代に探究活動などをしている場合は、主体的に学習を進めたことやそれによって身に付けた思考力などをアピールすることが重要になります。
総合型選抜の難易度・合格率
総合型選抜は、学力で選考する一般選抜と違い、大学によって選考方法や基準が異なるため一概に難易度を比較することが難しいです。
一般的には、総合型選抜の方が入りやすいと言われていますが、実際にはどうなのでしょうか。下表は早稲田大学と慶應義塾大学の2023年度入試での一部学部での倍率をまとめたものです。
大学 | 慶應義塾大学総合政策学部 | 早稲田大学政経学部 |
---|---|---|
総合型選抜 | 6.5 | 2.7 |
一般選抜 | 5.8 | 3.7 |
総合型選抜の方が倍率が高い慶應義塾大学総合政策学部に対し、早稲田大学政経学部は逆になっていることがわかるかと思います。
他の大学でも、同様に一般選抜の方が倍率が高い場合はよく見られるので、「入りやすいと聞くから」と短絡的に総合型選抜を選ぶのは危険です。
その一方、総合型選抜と一般選抜は時期が被らないことが多いです。志望大学への入学チャンスを広げるために、どちらも受験すること自体は可能と言えます。
総合型選抜試験の難易度・合格率をより詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
総合型選抜にまつわるFAQ
最後に、総合型選抜へよくある疑問へまとめて回答します。
- 総合型選抜の受験資格は?
- どんな人が総合型選抜に受かる?
- 一般選抜と併願できる?
- 探究活動は有利に働くか?
Q.総合型選抜の受験資格は?
基本、総合型選抜試験は通常の大学受験資格(高校の卒業見込み者、既卒者、高卒認定取得者など)を持っていれば受験可能です。
ただし、一部の大学や学部、方式では出願に条件が必要となることがあります。条件の例を一部記載しましたので参考にしてください。
- 年齢制限、現役のみ、浪人は一浪まで
- 一定の評定平均
- 英検などの資格
- 共通テストの点数
- スポーツや芸術など特別な活動経歴、その結果
受験資格のほか、総合型選抜試験に必要なものを詳しく知りたい人は、次の記事を参考にしてください。
Q.どんな人が総合型選抜に受かる?
総合型選抜では、大学の「求める人物像」と学生の「学びたいこと」がマッチしていることが重視されます。
そのため、次のような方が受かりやすいと言えます。
- 学びたいこと、行きたい大学、将来の展望などが明確である
- 大学側の「求める人物像」「アドミッション・ポリシー」を理解できている
- 上記2点がマッチしていることを言語化できる
これらの要素を打ち出しやすいという意味で、次のような人は総合型選抜に有利な部分がありますが、必須ではありません。
- 評定平均、学業成績が高いこと
- 部活動、スポーツ、課外活動、探究活動などを頑張ってきたこと
- 英語外部試験をはじめとした資格を持っていること
Q.一般選抜と併願できる?
総合型選抜はその大学のみの専願が原則ですが、一部の大学は他大学との併願を認めております。募集要項に「専願」「併願不可」などの記載がある場合は併願できませんので出願の際に注意するようにしましょう。
なお、総合型選抜は一般選抜より早く選考が始まります。並行して対策を進めることができればチャンスを増やすことが可能です。
しかし、対策の方向性と量が増えてしまうので、どちらも中途半端になってしまう危険性も孕んでいます。目標にする大学への学力や、試験内容との相性なども考えて検討するようにしましょう。
なお、下の記事では総合型選抜試験の併願可能な大学を紹介しているので、あわせて参考にしてください。
Q.探究活動は有利に働くか?
自分の学びたいことと結び付けられた場合、探究活動は有利に働きます。
探究活動は、日々の生活や社会問題に対して問いを立て、課題解決に向けて学びを深めていく学習のことを言います。そのため、大学で自分が「学びたいこと」と探究活動で行ってきたことをうまく結び付けられた場合、面接などでの説得力が増すと言えるでしょう。
また、探究活動は自ら情報収集する、社会的な課題を発見する、主体的に問題解決を進めていくことなどが求められます。学力の3要素に深く関わる部分なので、その面でも面接などで有利に働く可能性が高いです。
まとめ
今回は総合型選抜の試験内容についてまとめました。
高大接続改革に伴う大学入試改革の影響もあり、多くの大学が総合型選抜を取り入れ、多様な入試方式を実施して門戸を広げています。
まだ受験まで時間がある方で志望する大学や学部がある場合は、試験内容を調べて今のうちにできることがないか考えておくこともおすすめです。
一般選抜だけにこだわらず視野を広く持って大学への入学方法を検討していきましょう。