この記事では、不登校から総合型選抜試験の合格を目指す具体的な手順を解説します。
- 高校卒業の資格があれば受験可能な点から、不登校でも総合型選抜試験は受けられる
- 総合型選抜は総合評価のため、不登校という理由だけ不合格にはならない
- 試験対策の第一歩は「大学に行く目的を明確にする」こと
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不登校でも総合型選抜は受験可能
実は結論からいうと、不登校でも総合型選抜の受験は可能です。
大学によって出願条件の違いはありますが、どの大学でも不登校でも総合型選抜を受験する上で最低限必要なのは「高校卒業の資格があるかどうか」です。
大学受験をするにあたり、大学で指定された願書や志望書等の書類提出と共に必ず「調査書」を提出します。調査書は高校卒業見込みがある人に対して高校が発行することができます。
もし、出席日数や評定平均が高校卒業を認める基準以下の場合、高校卒業見込みとしてみなしてもらうことができずに調査書を発行してもらえません。
しかし不登校でも出席日数や評定平均が高校が定める基準に足りており、学校側から卒業見込みに相当すると判断されれば、調査書を発行してもらえます。結果として、総合型選抜を受験できるのです。
不登校が総合型選抜の合否に与える影響
結論からいうと、総合型選抜を受ける上では不登校だからという理由だけで合否に関わることはありません。
文部科学省が出している、総合型選抜の評価・判定方法は次の通りに示されています。
- 入学志願者本人が記載する活動報告書、大学、入学希望理由書及び学修計画書等を積極的に活用する。
- 入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・ 総合的に評価・判定する。なお、高度な専門知識等が必要な職業分野に求められる人材養成を目的とする学部・学科等における選抜では、当該職業分野を目指すことに関する入学 志願者の意欲・適性等を特に重視した評価・ 判定に留意。
- 「見直しに係る予告」で示した評価方法等(例:小論文、プレゼンテーション、口頭 試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績等)、又は大学入学共通テストのうち少なくともいずれか一つを必ず活用する。
つまり総合型選抜は、書類審査に加えて面接や小論文、大学独自で設定した試験方法を使用します。受験生本人の能力・意欲・適性を図った上で総合的に判断して決定します。
しかし、提出した書類は合否の判断材料の1つとして使用されます。例えば小論や面接等を経て合否の当落線上に複数人いたとした場合、出席日数の少なさをマイナスポイントとしてみなす大学もあるかもしれません。
もし間に合えば、今からでも出席日数を多くするように対策をする、または出席日数の少なさをカバーできるだけの試験対策を綿密に行う必要があります。
なお、停学処分を受けた場合も総合型選抜では欠席日数として換算されます。停学処分や欠席日数が総合型選抜の合否にどう影響するのかを詳しく知りたい人は、下の記事を参考にしてください。
不登校から総合型選抜試験に合格した成功例
本項では、不登校から総合型選抜試験に合格した成功例を2つ紹介します。
- 東洋大学 福祉デザイン学部 村上さん
- 慶應義塾大学 文学部 城山さん
1.東洋大学 福祉デザイン学部 村上さん
村上さんは某大学の付属高校に通っていました。高校時代は友達と賑やかに行動するのが好きで、学校祭の実行委員になって積極的に活動していました。
その一方で高校1年生の時に学校にいけない時期がありました。そのため評定平均が足りず、担任の先生から内部進学や指定校推薦ができないと伝えられています。
高校2年生の冬に担任の先生と進路相談をしている中で、総合型選抜での受験を勧められて興味を持ちました。そこで高校3年生を前に総合型選抜入試専門の塾に入って受験対策をしました。
村上さんが受験した大学の出願条件は、評定平均が設けられていないのが特徴です。評価は書類選考と面接、小論文により総合的に判断します。
村上さんは不登校により、評定平均が低めで内部受験や指定校推薦をするうえでの足枷となってしまいました。一方で学内での活動に力を入れた時期があることと、精神保健福祉士という職業につきたいという夢のために大学で学びたいことがはっきりしていました。
そのため、面接や自己推薦書で自己PRできる内容が十分に備わっていました。評定平均が低いというウィークポイントを、他の分野でカバーして見事大学に合格しました。総合型選抜入試を選んだからこそ、村上さんの良さを最大限に生かすことができたといえます。
2.慶應義塾大学 文学部 城山さん
城山さんは高校に入学したものの、高校生活が合わずに1年生の夏に退学し、通信制高校に転校しました。転校後はバンド活動や漫画の作成、高校生団体に所属してラジオで発信するなど、興味を持ったことに夢中になって取り組みました。
当初から慶應義塾大学への憧れがありましたが、一般入試での合格の可能性は五分五分でした。そこで高校の先生との面談時に総合型選抜を勧められました。
試験内容の特徴としては、評定平均が4.1以上と指定されていることです。また大学入学資格検定、高校の卒業認定試験の合格者は出願ができません。城山さんの場合は全日制高校を退学して通信制高校に通っていたこと、通信制高校で評定平均を高く保つことができたことで、出願資格を得ることができました。
また、大学の総合型選抜入試では「アドミッションポリシー(入学者の受け入れ方針、大学が求める学生像)に沿っているか」を見極める場です。城山さんは大学で学びたい教授を定め、どんなことを研究しているのか教授の本や論文を読みました。大学で何を学びたいかを自身の高校時代の経験と重ね合わせて志望理由を書きました。
大学にとってはアドミッションポリシーに沿っていると明確に判断しやすい状況でしょう。
不登校になっても環境を思いっきり変えたこと、一般入試では合格率が五分五分だったとしても、何を学びたいかを徹底的に分析して自己PRにつなげる城山さんの作戦が、総合型選抜入試を利用したことがプラスに働いたといえます。
不登校から総合型選抜を受験できる大学例
ここからは、不登校から総合型選抜を受験できる大学例を、3校紹介します。
- 早稲田大学 国際教養学部
- 明治大学 理工学部
- 順天堂大学 スポーツ科学部
1.早稲田大学 国際教養学部
早稲田大学 国際教養学部の応募資格は大学入学資格を有するかどうかです。出願書類には必ず英語能力に関する試験(英検、TOEFL iBT等)の資格提出が求められています。
Application Formは志望理由書や自己PRの類のもので、中学卒業以降の国際的な経験を書く欄があります。試験では出願書類と当日の筆記試験で合否を判定し、面接がないのが特徴です。
項目 | 詳細 |
---|---|
出願条件 | 大学入学資格を有するもの(含む見込み者) |
出願書類 | 1,Application form(早稲田大学指定) まずはオンラインで出願システムで作成、印刷したものを片面印刷 2, 出願資格を証明する書類(高校で発行された調査書等) 3, 英語能力に関する試験結果(試験の指定あり) <以下対象者のみ> 4,国内および海外で単位を修得した学校等が発行した調査書 5,体験・取組内容証明書 オンライン出願システム(TAO)の項目「体験・取組内容証明」に入力をした方のみ 6,日本での在留を証明する書類 7,パスポートのコピー 8,複数の氏名が同一人物であることを証明する書類 |
評価方法 | 書類審査と試験当日の筆記審査 |
当日の試験内容 | 「Crinical Writing 」 “Critical Writing”とは、与えられた資料を理解し、分析したうえで、自分の考えを表現する記述形式の審査。「書類審査」および「筆記審査」は出願者全員を受験対象として実施します。 |
2.明治大学 理工学部
明治大学 理工学部の受験資格は高校卒業資格があるかどうかです。当日の学力審査は入学後に使用する頻度の高い数学(微分・積分、数列・ベクトル・複素数・三角関数)英語の基礎学力の理解が求められます。
評価方法が書類審査と面接と当日の学力調査なので、当日の試験の評価比重が高いことが特徴です。
項目 | 詳細 |
---|---|
出願条件 | 大学入学資格を有するもの(含む見込み者) |
出願書類 | 1. エントリーシート 2. 志願票 3. 出願資格証明書類(高校調査票) |
評価方法 | 当日の学力審査(数学・英語の基礎学力)面接、書類審査 |
当日の試験内容 | ・学力審査(数学・英語の基礎学力) ・面接 |
3.順天堂大学 スポーツ科学部
順天堂大学 スポーツ科学部の受験資格は、高校卒業資格があるかどうかのみです。
出願書類の活動報告書では、学校内での活動はもちろんのこと、資格やボランティアの実績等高校以外での活動を書く欄が設けられています。高校時代に何かに打ち込んで活動をしてきた人にとっては、アピールしやすい試験形態です。面接はオンラインで実施されます。
項目 | 詳細 |
---|---|
出願条件 | 大学入学資格を有するもの(含む見込み者) |
出願書類 | 1.志願確認票 2.自己アピールシート 3.活動報告書 4.調査書 |
評価方法 | 志願書類と面接の内容を総合的に判断 |
当日の試験内容 | 面接試験と口頭試問(オンライン) |
不登校から総合型選抜を受けて合格するまでの5STEP
ここからは、不登校から総合型選抜を受けて合格するまでの具体的な手順を、5つのステップにまとめて紹介します。
STEP1:卒業見込みが出せるかを確認する
まず高校の先生に卒業見込みが出る状態か確認してみましょう。
総合型選抜で受験をする上でスタートラインに立つために、高校卒業見込みが出て、高校に調査書を発行してもらえる状態になることが必要です。不登校であっても卒業見込みを出せる状態であれば、STEP1はクリアになりますね。
これから出席日数を増やせば卒業見込みが出る可能性がある場合には、出席日数を増やすように行動しましょう。体調面を考えて教室で授業を受けることが難しい場合には、保健室登校を出席としてみなしてくれる高校もあります。出席の基準についても高校へ確認してみましょう。
現在通っている高校で卒業見込みが出ない場合には、通信制の高校への転校、高等学校卒業程度認定試験(通称:大検)の受験を検討してみてもよいでしょう。
STEP2:大学で何がしたいかを明確にする
総合型選抜を受験する上で重要なのは「自分が大学で何を学びたいか」を明確にすることです。
理由は2つあります。1つ目は入学してから「こんなはずではなかった」と思うようなミスマッチを防ぐ目的があること。もう1つは総合型選抜の受験において「なぜこの学部を志望したのか」を書類や面接で自己PRをすることが、評価の対象となるからです。
大学で何がしたいか考える方法として、まずは今までの人生を振り返り、興味があることを探しましょう。
大学で何を学びたいのか漠然としている人は、まず自分の今まで生きてきた人生を振り返り、自分が興味があることをいくつかピックアップしてみましょう。なぜ興味を持ったか理由を掘り下げて考えてみることで、学びたい理由が具体的で明確になります。
また、将来の夢や就きたい職業が既に決まっている人もいると思います。その場合には、大学で何を学べば将来の夢に近づくかを逆算して考えていきましょう。
STEP3:志望校を決める
大学で何がしたいか明確にした後に志望大学を選びます。
不登校から総合型選抜試験に合格した城山さんの例でも述べたように、大学もしくは大学の学部ごとに「アドミッションポリシー」と言う「入学者の受け入れ方針」「大学が求める学生像」を設けています。
総合型選抜は、アドミッションポリシーと受験生の意欲や志望動機が一致しているかを見極める場です。受験を検討している大学のアドミッションポリシーに共感できて、自分がこの大学でやりたいことを学べるか確認してみましょう。
次に受験資格を確認します。高校卒業見込み以外に、評定平均〇点以上、〇〇の資格が必須等の条件があらかじめ設定されている場合があります。自分がどの大学であれば受験資格があるのかを確認してみましょう。
そして、具体的な試験内容と評価基準について調べます。基本的には書類提出・小論文・面接が主な試験形態です。しかし大学によってはグループディスカッションを設けたり、学力試験、実技試験を設ける場合もあります。
配点の比重も大学や学部によって異なります。自分の力が最大限に発揮できそうな大学を選べると良いですね。
総合型選抜におけるアドミッションポリシーについてより詳しく知りたい人は、次の記事を参考にしてください。
STEP4:評価UPにつながる資格や活動をする
志望校の受験にあたり、評価UPする資格や経験が求められるのであれば一刻でも早く活動しましょう。不登校であれば、学外での活動や取得可能な資格を経験として伝えることができれば良いでしょう。
資格関連で言うと、英検準1級や2級、簿記、IT関連の資格等がよく評価されると言われています。受験の願書提出時に、資格の合格証明書も合わせて送付するように求められている場合があります。受験シーズンに間に合うよう、スケジュールを組んで試験に取り組んでみましょう。
また、学外での活動の主な例としては留学やボランティアがあります。活動の経験談は面接や志望理由書での話題として大いに役立ちます。
ただ活動を行うだけでよしとするのではなく、経験を通してどのような学びを得たか、大学生活や将来においてどのように生かせるかを考えながら進めましょう。総合型選抜で有利になるおすすめ資格を詳しく知りたい人は、次の記事を参考にしてください。
STEP5:試験対策を行う
STEP5では試験対策を行います。総合型選抜入試は、大学側がアドミッションポリシーに沿っているかどうか直接見極める場です。総合型選抜の受験生は大学の志願理由書や面接等で、自分の意思を自分の言葉で表現してアピールする必要があります。
まずは、普段から漠然と考えていることを言葉に出したり文章に書いたりして、言語化する癖をつけてみましょう。自分が伝えたい熱意や願望を、大学側に伝えて理解してもらうためには必要な作業です。
そして実際に志望理由書を書いたり面接の練習をするときには、高校の先生や塾の先生、友人の力を積極的に借りましょう。独りよがりではなく、客観的な意見を仰ぐことでよりよい準備ができる可能性があります。
そして、試験日から逆算して何をしなければいけないか、計画を立てて進めてみましょう。大学によっては、総合型選抜の過去問をHP上で公表しているので、試験対策に解く練習をしたり、試験の傾向を分析する等して活用しましょう。
総合型選抜試験に向けた勉強法を詳しく知りたい人は、下の記事を参考にしてください。
まとめ
本記事では、不登校の人でも総合型選抜で大学受験ができることを解説しました。
今までの解説を通して、総合型選抜にチャレンジする意欲がわき、合格に向けて一歩を踏み出すことが出来れば幸いです。不登校の人でも総合型選抜で合格を勝ちとり、充実した大学生活を送ることができることを祈っています。
なお、大学ごとで総合型選抜試験の難易度や倍率を詳しく知りたい人は、下の記事を参考にしてください。